こんにちは、野本です。
マレーシアマガジンでは2013年からマレーシアの学校見学ツアーを行っていますが、私もスタッフとして同行することが増えてきました。
さて、日本ほどではないにせよ、マレーシアの学校にもいじめはあります。そんな中、「ブリー・フリースクール(いじめのない学校)」を掲げるのが、クアラルンプール郊外にあるキングスレー・インターナショナルスクールです。比較的新しい学校ですが、英語ができない日本人でも入れてくれる学校として知られています。
この学校では「ブリーフリー(いじめのない学校)」が売りです。
どうやっていじめを減らすのか?
以前から気になっていたのですが、今回、運営スタッフ、保護者、子供に取材することができました。
この学校では「いじめは起きるものだ」という性悪説に基づき、ハイテクを駆使していじめ撲滅を狙います。
学校の運営側であるレイモンドさんによれば、いじめをした場合は警告、従わない場合には、退学です。
ここまでは、マレーシアの普通の学校にも見られます。特異なのは、ここからです。
校内では350ものCCDカメラを校内にセットし、すべての教室、廊下は映像に撮られ、常時生徒たちをチェックします。
学内はセキュリティが厳しく、エレベーターホールなど、先生の目が届きにくいところには、教職員が持つ特別なカードがないと出入りができません。食事時の食堂には先生が交代で常駐します。
校内のありとあらゆる場所で「bully free」のポスターを見ます。この「bully free」のポスターはユニークで、一枚一枚で書いてあることが違うのです。
「意地悪なことや、悪い言葉をいうのもいじめです」
といったポスターが学校中貼ってある感じで、この学校にいると、嫌でもいじめを意識せざるをえません。
いじめを咎められるのは大人も同様です。例えば、母親同士のイジメも禁止です。親のスタッフの態度もチェックされます。「例えば、親が受付で学校スタッフに無礼な言葉を使ったり、怒鳴ったりした場合も警告です」とレイモンドさんは話します。
「子どもだけにルールを守らせても意味がありません」と彼は続けます。「子供は常に親を見ているからです。基本的にマナーは両親からくるものです。だから新しい家族が入ったら、我が校のいじめ撲滅システムについて理解してもらい協力してもらいます」
「サイバーブリング」と呼ばれるインターネットでのいじめにはどう対処するのか? 「生徒のフェイスブックなどは常時見ています。もしいじめがあれば、そのページをプリントして持ってきてもらいます」とレイモンドさん。
しかし、本当にこんなシステムの運用が可能なのでしょうか。
レイモンドさんは「先日もある生徒が他の生徒を押したことがありましたが、すぐCCDカメラの映像を見て検証しました。ふざけて押したのが、相手は嫌だったケースでしたね」と話す。すでに退学になった生徒もいるそうです。
父兄や子供達にも聞いてみました。
「実際に厳しく運営されてますよ。謝罪文を書いたり、学校から警告を受けた経験がある子も多いです」とある父兄は話してくれました。CCDカメラのチェックも頻繁に行われており、ちょっとした悪口でも、報告される傾向にあり、ときには教師がCCDカメラで素行をチェックされることもあるそうです。
生徒の一人は、「悪い言葉を使うことに対してかなり厳しいです。いつもカメラでチェックされるので気が抜けません。先生の行動をチェックしたこともあります」と教えてくれました。
ただ、実際にいじめがないのか?はもっと取材してみないとわかりません。
しかし、方法論はともかくとして、いじめと断固戦う姿勢は、いじめに苦しんでいる子供にとっては安心かもしれません。
この学校は管理教育でいじめを減らしますが、正反対のアプローチで、生徒と徹底的に話し合い、いじめを減らす学校もマレーシアにはあります。長く取材していますが、その学校ではいじめは実際にほぼ起きていませんね。
何れにしても、日本と違うな、と思うことは「いじめは起きる」と学校が認め、対処していくところです。