icon-plane 東南アジア的テキトーのススメ 第四回 超長時間労働で考えたこと

東南アジア的テキトーのススメ 第四回 超長時間労働で考えたこと

 

マレーシアに来てうつ病が治った筆者による人気コラム。
長時間労働はうつ病の1つの要因となっていますが、なぜ日本では長時間労働になってしまうのでしょうか。日本とマレーシアの労働環境はどう違うのか。日系企業での経験を元に考察して見ましょう。

 

超ブラック企業での労働経験

 

 まずは、個人的な経験をお話させてください。

 

 もうずい分前になりますが、とある国で会社設立間もない日系企業で働いていたときのことです。社長も直属の上司も日本人で、ローカルはほとんどいない会社でした。直属の上司は古いタイプで、長時間働くことがいい仕事になると思っていた方です。

 

 私はやる気満々で入社しました。やりたかった編集の仕事でしたので、いろんなことを上司の方から教えていただきました。同じ世代の同僚が何人かいたので、事務所はそこそこ楽しかったのですが、労働時間が異常に長いのが大変でした。

 

 出社時間は朝9時で、その後にミーティング。情報収集や取材、執筆などなど毎日やることはたくさんあります。一日の仕事の量は午後いっぱいでこなせるのですが、困ったことに夕方6時や7時になっても帰れないのです。自分の仕事は終わっているので本来ならば帰れるのですが、それができません。上司はいつまでたっても帰ろうとしないどころか、いろいろな雑務や朝とは違うことを夕方になって指示します。私だけではありません。同僚全員に仕事を振ってしまうので、全員が夜遅くまで帰れない状況です。

 

 ある日の夜のことです。夜中の1時を周った時点で「印刷工場を見に行きましょう」と言われたときは唖然としました。毎日夜中1時2時まで働き、ときには3時4時となる。しかし、出社時間の9時はどんなことがあっても変わらないので、帰宅して2~3時間ほど寝て出社するという状況が2カ月以上ありました。そう、驚くべきことに土日も祝日もなく、休みはまったくない有様でした。まさに今でいうブラック企業に「超」がついても過言がないでしょう。
 

 

とうとう力尽きて退職……

 

 1日何時間労働だったのでしょうか。15~18時間労働という考えても恐ろしくなるような労働時間でした。2カ月以上休みもなく、ひたすら働くと人間の身体は蝕まれます。
 私の場合は慢性的な疲労とストレスのせいか盲腸になりました。入院したとき初めてといってもいいほど休養がとれたのです。

 

 そして、盲腸になったことがきっかけで仕事を辞めることを決意しました。この労働環境ではいつか過労死すると思ったからです。仕事は好きでしたが、自分で勉強する時間やプライベートの時間がなく、ずっと事務所に張り詰めている状況では精神もずたずたになっていくだろうとも考えました。その結果、退職を選びました。

 

ハッピーに働くことが一番

 

 それでは、マレーシアの企業では長時間労働はありえるのでしょうか。結論から言うとNoです。
 確かに12時間ぐらいまで働いている人はざらにいますが、それ以上働くということはほとんどありえません。給与が多少よくても、残業代が多く出ても、そこまでは働きません。それには仕事に対する根本的な考え方の違いがあるからです。

 

 マレーシアの人たちにとっても生活の糧を得るため、確かに仕事は重要です。ただ、見ていると、ハッピーでなければ続けないという傾向があります。自分を精神的にも肉体的にも酷使するまで仕事はしませんし、ましてや過労死ということはまずこの国ではありえないのです。

 

 例えば、自分が専門とする仕事でも会社の人間関係が悪かったり、仕事に対する要求が異常に高かったりするといつの間にか来なくなります。特に上司に怒鳴られたりした場合は翌日からまったく会社に来なくなります(インドネシアの場合は殺人にまで発展しますので気をつけて下さい。人前で怒鳴ることはアジアでは絶対禁物です)。ストレスを溜めてまで仕事はしないのです。一日最低でも8時間いる場所ですから、そういったストレスのなかでハッピーでいられないのは彼らには耐えられないのです。

 

 日本流では「忍耐や根気が足りない」と文句を言う人もいますが、考えてみれば確かに異常なストレスのなかで仕事してもいい結果は出ないはずです。彼らにとって精神的・肉体的にハッピーでベストな状態で仕事をすることが、最良の結果につながるのです。

 

 「日本ではそうはいかない」という声は出てくるかと思いますが、海外からみていると日本の長時間労働で生まれるメリットは何なのかと考えてしまいます。精神も心も疲れ果て、うつになって長時間労働が結果的に長時間休養になっていく。マレーシアの例にまで見習わなくとも、自分のハッピーを考えて、今よりもちょっとわがままになって仕事をしてみませんか。

 

プロフィール:ちゃらんぽらん王子

 

海外滞在歴約20年。東京で編集の仕事をしていたとき、3年にわたりうつ病を患っていたが、東南アジアに移り住んで自然治癒して今に至る。現在はマレーシアを拠点。インドネシアやタイ、ヨーロッパにこれまで滞在。