icon-plane 「マレーシアで日本製品をどう売るか」クールジャパンビジネスセミナー(第二回)

「マレーシアで日本製品をどう売るか」クールジャパンビジネスセミナー(第二回)

 

1月12日、日本の内閣府・知的財産戦略推進事務局が主催するクールジャパンのイベント「クール・ジャパン・ビジネス・セミナー・Japan & Malaysia :Future Together-日本・マレーシア両国の発展に向けてクールジャパン戦略から考える」がクアラルンプールのウエスティン・ホテル・クアラルンプールで行われた。マレーシアマガジンではこのイベントをレポートしたのでご報告する。(マレーシアマガジン=野本響子)

 

クール・ジャパン・ビジネス・セミナーは、クールジャパンの観点から、日本とマレーシアの発展につながる連携の可能性を探るシンポジウム。平井卓也内閣府クールジャパン戦略担当大臣、内閣府の住田孝之知的財産戦略推進事務局長も来馬。マレーシアでビジネスを行っている日本人・マレーシア人が登壇し、浜野京内閣府政策参与が進行役となり、議論した。今マレーシアで日本の製品を売るときに日本企業が苦戦するのは何故なのか。現場からは構造的な問題が指摘された。

 

(参加者一覧)
平井卓也大臣(内閣府・クールジャパン戦略担当大臣)
住田孝之氏(内閣府知的財産戦略推進事務局長)
浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)
石橋正樹氏(76Style代表取締役)
五木田貴浩氏(ふぁん・じゃぱん株式会社代表取締役)
坪野香梨氏(AZIA MARKETING MALAYSIA SDN BHD CEO)
Desmond Ngai氏(WEB TV ASIA Senior Vice President)
山口聖三氏(UNLOCK DESIGN International CEO)
(文中では敬称略)

第一回はこちらから

http://www.malaysia-magazine.com/news/38404.html

 

第二回 クールジャパンは単に「日本のものを買ってもらう」ではない

 

山口聖三氏(UNLOCK DESIGN Internationa CEO)

マレーシアは、富裕層の世帯数が東南アジアでも一番多い[w3] ※。とはいえ、セグメンテーションは難しい。高級住宅街に住んでフェラーリに乗っている人が、近場で5リンギットのご飯を食べているという現実がある。「富裕層だからこれが売れる」というのが定義しにくい難しいマーケットだ。マレーシアの訪日観光客が増えるなか、日本で知った味をマレーシアに戻ってから食べてみたい人が増えている。そう行ったところにピンポイントでマーケティングできれば効果が高いのではないか。
「※年間可処分所得が35,000ドルを越える富裕層の人口がASEAN内で最も多い」

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

セグメンテーションが難しいということですね。しかし、日本旅行をしてきた層にターゲット進めていけば良いのではということですね。

 

石橋正樹氏
僕は逆で、富裕層こそ最も攻略が難しいマーケットだと思っている。富裕層はお金の使い方が賢いから富裕層になる。こうした層は、信頼に対してお金を払う。信頼を構築するには、相当な時間と投資が必要で、それは世界中のラグジュアリーブランドが、このマーケットでしのぎを削っているのを考えると良く分かる。だからここに他のブランドが挑戦しようとしても難しく、単に品質が良いというタグ付けだけで新しい商品をそのマーケットに入れて行くのは大変な作業だ。

富裕層が旅行中に値段の高い果物などの高級品を食べたりするのは、旅行者がマーケットに入っていっているから。ところが自分の国に帰ってきたら冷静になる。自国に戻ると、適正な価格がいくらかわかる。日本旅行中に食べた同じ果物を20パーセント、50パーセント高い値段で現地でも食べるか? というと違う。

日本の良いものをアジアの富裕層マーケットに、という発想は、入り口が間違っているような気がする。ある日本のファッションブランドの取締役が以前、米国で倉庫の中に山のように積み上げられていたデニムをただ同然で持って帰ってきて、ビンテージジーンズとして売って成功したという話を聞いたことがある。ポイントは、「マーケットを知っている日本人がわかってて売った」ということだ。アメリカの倉庫では廃棄されるのを待っていたものが、日本の目利きバイヤーにとっては、宝の山に映る。現状の海外戦略は、「日本人が日本で選んだものを売っている」から問題になる。価格の弾力性もないから、コストが高く、自ずと富裕層しか買えない値段設定になる。

一方で、感度の高いマレーシア人からは良い商品を見つけたが、日本企業は非常に保守的で取引開始がしづらいという相談もある。日本企業からすると、与信や回収の心配があるから当然なのだが、ここをどうにかして担保できて、マレーシア人が「これは売れる」と思うものを見つけて取引できるしくみを構築できれば面白いと思う。マレーシア人が売れると思うものは、現地で受け入れられる確率も高くなるだろう。

 

メイドインジャパンにこだわらない

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

富裕層がいても、その富裕層にリーチできているのか? ということですね。 日本人のバイヤーが自分の感覚で持ってきてもミートしない。それはマーケットインの思想ですね。では例えば、日本のフルスペックのものをスペックダウンしてローカライズして売っていくってことでしょうか。

 

五木田貴浩氏

メイドインジャパンを求めている人も一定いるが、ボリュームが出づらいため、投資も回収もしづらく、こだわる必要はないと思う。メイドインジャパンで売れているものは、ハイクオリティだけどリーズナブル、値ごろなものか、または、日本でしか作れないユニークものである。例えばお茶とか、ラーメン、お菓子。お茶、ラーメンは日本ならではのユニークさがあ流。お菓子はどの市場にもあるが、日本のお菓子はおいしい、つまり品質が高いわりに手ごろであるため売れていると思う。日本企業はメイドインジャパンにこだわるが、現地の企業とジョイントベンチャーしたり、自らから現地生産したり、「Made by/with Japan」にすれば良いのではないか。例えば、ボルボは今は中国の会社になったが、マレーシアの広告では「Made by Sweden」と謳っている。このような事例は参考になる。

 

坪野香梨氏

外国人が化粧品をうる店に来て3万円のクリームをいっぱい買っていく。そこで化粧品を輸出したら売れるのでは? と化粧品会社から相談されるが、輸出にはライセンスやISOなどのスタンダードも必要で、ハードル高く難しい。だから、メイドインジャパンじゃなくて、デザイン・バイ・ジャパンはいかがですか? と話しているが、「考えます」と行って二度と戻ってこない。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

日本のいいものをこちらと組んでコラボして売る。よりマーケットに近いものを求めてはどうか。そこにデザイン・クリエイティビティでいわゆるクールジャパンの本質が入ってくる。デズモンドさん、マレーシアの人に日本のサービス、十分に伝わってますか?

 


 
 

ブランドは、長い時間をかけて作り上げるものだ

 

Desmond

マレーシア人は大きな日本のブランド、例えばトヨタなどはよく知っている。しかし小さいところになると知らない。しかしマレーシア人の95パーセントはスマホを使っていてデジタルに強い。ラザダ(マレーシアのECサイト)では11月11日に大きなセールをやって売り上げも大きかった。この時は、インフルエンサーがコンテンツを作ってコミュニケーションした。だから日本もEコマースを持つべきだと思う。マーケティング・クリエイティングなら、うちのような会社と組んでやるべきだ。若い人もお母さんのような人もデジタルコンテンツにくる時代になっている。

平井卓也内閣府・クールジャパン戦略担当大臣

賛成だ。去年マレーシアで起きた政権交代では、地上のテレビ局と、ネットの中でのコミュニケーションが全く違った。その結果、テレビで与党寄りの報道が多い中で、ネットの中での力で政権交代が起きた。マレーシアにおいては、デジタルのコミュニケーションの力が日本よりはるかに強い。デジタルをどう使うかが基本戦略の中で一番重要だと思う。

クールジャパン・ストラデジーとは何かというと、「日本のものを買ってもらう」ではない。日本の本当の現在を理解してもらうという意図がある。単に貿易的な黒字を生むのではなく、国家としての安全保障の需要な部分でもある。国家のソフトパワーをどう戦略で描いて行くかが政治的に重要なテーマだ。結果として日本の国に対する信頼、商品に対する信頼が醸成されていく。日本の文化、芸術、食べ物が多く支持される環境をいかに作って行くか。

海外の皆さんが日本で新しい観光地を見つけたり、ものが売れたりするというのは、まさにデジタルとグローバル化によるもの。今の日本を見てもらうというのが重要だ。その裏に日本の長い歴史・培われたものにもいずれ共感してもらえる意図がある。

ブランドを作るのは大変だ。私はエルメスやグッチの原価率も知っているが、ブランドというものは、単純に値段と価値の比較ではない。共感など、長い時間をかけて積み上がって行くものだ。

今、マレーシアと日本には、40万人ずつが行き来している状況で、両国は非常に(心理的に)近い。もっと国として、もっと市民同士が行き来しやすいようにしたい。それが両国の発展に手っ取り早い方法だと思う。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

深い、根本的な日本のバリューをどう醸成して海外に伝えて行くか。お互い訪問するということと、デジタルコミュニケーションをもっと活用し、行き来するきっかけを作るということですね。ではデジタルコミュニケーションをどうやって活用して行くのでしょうか? 山口さん、 MAGIC(マレーシアの政府主導のイノベーションセンター)でサポートしていますが、どうでしょう。

 

山口氏

デジタルマーケティングは、大半が一方通行で終わっている。企業がフェイスブックやインスタグラムなどで発信はしているが、商品を届けたい人、買ってもらいたい人の声が上がってこない。情報発信で終わっている。やりっぱなしの状態で結果も検証しきれていないのが課題だ。弊社ではアイデア募集やコンテストを定期的に行い双方向にしようとしているが 、この発信の一方通行を参加型に変えることにポイントがあるのではないか。

 

(第三回に続きます)

記事掲載日時:2019年01月27日 12:04