icon-plane 「マレーシアで日本製品をどう売るか」クールジャパンビジネスセミナー(第三回)

「マレーシアで日本製品をどう売るか」クールジャパンビジネスセミナー(第三回)

 

1月12日、日本の内閣府・知的財産戦略推進事務局が主催するクールジャパンのイベント「クール・ジャパン・ビジネス・セミナー・Japan & Malaysia :Future Together-日本・マレーシア両国の発展に向けてクールジャパン戦略から考える」がクアラルンプールのウエスティン・ホテル・クアラルンプールで行われた。マレーシアマガジンではこのイベントをレポートしたのでご報告する。(マレーシアマガジン=野本響子)

 

クール・ジャパン・ビジネス・セミナーは、クールジャパンの観点から、日本とマレーシアの発展につながる連携の可能性を探るシンポジウム。平井卓也内閣府クールジャパン戦略担当大臣、内閣府の住田孝之知的財産戦略推進事務局長も来馬。マレーシアでビジネスを行っている日本人・マレーシア人が登壇し、浜野京内閣府政策参与が進行役となり、議論した。今マレーシアで日本の製品を売るときに日本企業が苦戦するのは何故なのか。現場からは構造的な問題が指摘された。

 

(参加者一覧)
平井卓也大臣(内閣府・クールジャパン戦略担当大臣)
住田孝之氏(内閣府知的財産戦略推進事務局長)
浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)
石橋正樹氏(76Style代表取締役)
五木田貴浩氏(ふぁん・じゃぱん株式会社代表取締役)
坪野香梨氏(AZIA MARKETING MALAYSIA SDN BHD CEO)
Desmond Ngai氏(WEB TV ASIA Senior Vice President)
山口聖三氏(UNLOCK DESIGN International CEO)
(文中では敬称略)

 

第一回第二回

第三回 マレーシア人をどうマーケティングに巻き込むのが正解か

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

双方向のコミュニケーション。若い世代、デジタルの利用者に参加してもらう仕組みをビジネスで作ってくる。面白いと思う。若い世代をターゲットにして、日本の価値をわかってもらうこと、教育コンテンツに若い世代は反応しますか。

 

石橋正樹氏
反応が一番いいのは、体験型、参加型のイベントだ。もっと言えば、日本の知育教育、エデュテインメントみたいな分野には現地の反応が非常に良い。今、20代から40代くらいのマレーシア人で日本に興味のある人たちの入り口は、小さい時に見たアニメや漫画だったりする。これから育つマレーシア人に日本をどうアピールするか。例えば、知育のイベントや知育の展示を通して、一見、遊んでいるだけ。しかしそこに先進技術としての日本が入っている。親も子供と一緒に学ぶところで、日本のテクノロジーやクリエイティビティーを浸透させやすいと思う。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

教育から知育という話が出ました。入り口はアニメでも。古い教育から新しい教育へ。いろんなところにクールジャパンの本質があるのではないか。

 

住田孝之局長

昔から知性をくすぐりながら遊んでいくというのが、日本のクールジャパンの奥深くの根っこにある。多くの人に楽しんでもらいながら、馴染んで、共感してもらう。今や世界中どこにいてもTikTokなど映像で発信できるので、いままでのマーケティングとは違ってくる。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

日本のソフトパワー、クールジャパンの本質をいろんな角度から発信したい。日本人が語るよりも、マレーシアの人の目で再編集しながら見せてもらうのが、有効ではないか、ということですね。デズモンドさん。Youtubeとクールジャパンのミートは可能でしょうか?

 

Desmond Ngai氏

Yes。コンテンツクリエイターとしては聴衆を理解すべきだと思う。今ムービーや音楽、コメディ、たくさんのものがハリウッドや韓国から来ている。日本のコンテンツ、J-Popやドラマは20年前は人気だったが今は韓国に押されている。
例えば吉本興業や朝日放送などの日本のコンテンツと協力すべきだと思う。日本は素晴らしいコンテンツやアニメ、ゲーム、ドラマなどを持っているはず。マレーシア人が日本のコンテンツメーカーと一緒に協力したらどうか。例えば、東京フィルムフェスティバルなど素晴らしい映画祭がある。マレーシアや東南アジアのコンテンツクリエイターが映画祭に参加し、若い日本人と話す機会を持つべきだと思う。今や日本でもプラットフォームの一位はYoutubeとなった。若い日本人のコンテンツクリエイターやyoutuberと会って話す機会を作ってはどうか。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

 

訴求力のあるyoutuberを使って交流活発にして、マレーシアだけじゃなく、中国や他をせめて行く。では実際に企業の立場でどう活用するか? の戦略構想ができて行く。

 

五木田貴浩氏

「現地の人の編集」というのがキーワードだと思う。我々は消費者やインフルエンサーを巻きこんだグループインタビューなどを行っており、現地目線での商品評価やコメントなどを重視している。日本企業がついやってしまうのは、日本人目線での商品情報やこだわりを発信して終わりということ。ここを現地の人目線で、現地の人の言葉遣いや表現で実施する。日本人は真面目で体裁を整えることを優先し、きっちりした文法で編集するが、するとバズらない。巻き込みが非常に重要だ。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

価値をどうやって伝えるか。手法を研究するのが重要。マレーシアでコミュニティーを持っているインフルエンサーを使って見せて行くことが重要ではないかということですね。

 

坪野香梨氏

その通りです。マレーシアでは、口コミが重要です。ただ、SNSでインフルエンサーが記事を書いても、マレーシアの人も賢いので、広告だな、というのがわかってくる。フェイスブックもアルゴリズム変えて、広告効果がなくなってる。富裕層は信頼を買うので、信頼と口コミになってくると思う。

地方自治体はプロモーションするときに押し付けてしまう。日本人に良いものを押し売りしちゃう。コンテンツ自体も悪くなる。目利きが必要。じゃあ何がいいのかはマレーシアの人に任せる。そうしないとどうしてもお仕着せ、押し売りになってしまう。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

仕組みをどう使うか。マレーシア人が再編集する仕組みを作るということですね。

 

石橋氏

前半で構造上の問題について、お話しましたが、基本的にこれから日本商品の未来はかなり明るいと思っている。なぜならマレーシアは一人当たりのリテール・スペースが香港やシンガポールより広く、さらに2021年までに首都圏クランバレー、ジョホール、ペナンで新しく140のモールができる予定。完全に供給過多。さらに、2014年の時点でEC(電子商取引)化率は0.5パーセントだが、2020までに5パーセントに増やすという政府の構想もある。EC市場は年率最低でも10パーセントの成長が見込めるという試算もある。

このようにリテールは飽和状態だけどコンテンツはなく、どこにいっても同じものが売っている状況だ。ショッピングモールはいつも新しいもの、「マレーシア初の何か」を探している。この状態で、さらにモールが増え、EC との競争が激化していくと、差別化を図るために、新しい商品を探そうと躍起になる。すると日本には宝の山がある。それをどう探して行くか。インフルエンサーがバイヤーとして参加するプラットフォームはいけるのではないか。マレーシアと日本のインフルエンサー自身が面白い商品を見つけて行く。

 

Desmond氏

その通りです。インフルエンサー自身もビジネスに入りたいと思っている。例えば、多数のフォロアーを持つインスタグラマーなら、自分のファンにプロモーティングもできるので、インフルエンサーは販売者になることができる。ソーシャル・コマース・ストラデジーといわれるもの。インフルエンサーにも、リテールやコマースに入りたがる人もいるし、自分自身でプロダクトをデザインできる能力を持つ人もいる。例えば、台湾のインフルエンサーSaintが、Tシャツやサングラス、デザインしてる。ここが最近企業とパートナーになってユニークなデザインのサングラスを作っている。彼らが自分のファンにオファーして販売する。自分のファンにどうしたらもっといいか? を考えている。こうしてローカルと一緒に働き、彼らのフォロアーに直接訴求して行く。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

リアルとネットの融合ですね。アメリカでもこれは関心が集まっている。日本の優れたものがいろんな世界から今注目されている。それを見つけるのがマレーシア人のインフルエンサー。これをもっとうまく効果的に使って発掘して行くということですね。デズモンドのようにクリエイティブなデザインして行く。他の国の市場も広がるのではないでしょうか。
一つのツール、デザインではなく、もう少し積極的にレベニューシェアして行く。

 

五木田氏

非常に感じますね。現在進めている弊社の戦略では、インフルエンサーを集めたブランドづくりをやろうとしている。たとえば、メイドインジャパンの商品だけど、パッケージデザインは、現地のインフルエンサーにやってもらうとか。または、商品そのものを企画段階から現地を巻き込みながら作るなど。意見を聞きながら、彼らを巻き込むことにより、彼らが自身のブランドとして彼らのフォロワーなどに発信し、拡散していくことができる。その裏に日本品質やメイドインジャパンであるといったストーリーである。今後はそういう戦略が加速して行くのではないかと思う。

 

浜野京氏(内閣府参与・モデレーター)

最初に立ち返って、短期的ではなく長期的に日本ファンを醸成して行くという中長期的な戦略がもっと必要ではないか。

 

平井大臣

今、インフルエンサーを日本に招いてコミュニケーションしているが、日本の発信力の弱さには日本語という問題があると思う。私のSNSも日本語だ。やはり日本も英語を共通語くらいの感じで発信していけば、検索に引っかかるはず。そこをぜひ日本語を英語に訳して情報を出すのではなく、最初から英語で出すように心がけていきたいと思う。ありとあらゆる中で英語が共通言語としてやさしいし、便利だと思うので、強化したい。今日の話を聞いていて、まだ日本の発信力は低い。戻ったら作戦を考えててこ入れしたい。

 

住田局長

日本のコンテンツには説明がないと届かない。インフルエンサーはマレーシア人なので、コンテンツの側でもそれがどういうものなのか。裏にあるものをちゃんと説明することが大事だ。割と面白いなと思うのは、事業者は自分コンテンツのよさしか言わないが、自治体は、複数のストーリーを横に繋げることができる。地域の独特の自然や文化、食、手工業みたいなものを含めてろんなものが繋がって行くと面白い。こういうものがいろいろあるんだ、いってみようかなと。だから地域からの「繋げる」発信は面白い。さらに言えば、国はいろんなものをつなげてストーリーの入り口を観せて行く。どれをインフルエンサーがいいと思っているかがわからないが、こういう仕組みができて行くと良いのではないだろうか。

 

セミナーはこの後、質疑応答、記者による写真撮影の後に閉会となった。

記事掲載日時:2019年01月27日 13:00